田中史子のつぶやきコラム

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つぶやきコラム

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2018.1.3

親権者指定についての子の意思尊重

子の親権者・監護者の指定について裁判をするに当たり、子が15歳以上の場合には、子の意見を聞かなければならないことになっています(家事事件手続法152条2項、169条2項、人事訴訟法32条4項)。

また、子の年齢が15歳未満であっても、その子の意思を把握するように努め、子の年齢及び発達の程度に応じて、その意思を尊重しながら審判及び調停をすることが求められています(家事事件手続法65条、258条1項)。

子どもの権利条約(児童の権利に関する条約)12条1項においても、「締結国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする。」とされています。

子どもが言葉で、親権者についての自分の意見を表明できる年齢については、おおむね10歳(小学校4、5年生)以上であれば問題ないとされています。

しかし、子どもは、現在、いっしょに暮している親の影響を受けやすいこともあるため、子の意思を確認する場合には、子が言葉で一定の意思を発したとしても、その言葉が真意か否かは、慎重に検討しなければなりません。子どもの言葉が真意がどうかは、その際の態度や行動等を総合的に観察して検討する必要があると言えます。

この点、離婚後の親権者となった父が、事情によりやむをえず遠隔地にある実家の祖父母に子どもを預けたため、母が親権者の変更を申し立てた事案において、子どもの意思を重視し、母への親権者の変更を認めなかった事例があります(さいたま家庭裁判所平成22年6月10日審判)。

この審判においては、子どもが、母親と暮らすことよりも、祖父母の下で暮らすことを自ら選択したと述べ、母親に対する拒否的感情をあらわにし、全面的に拒絶する発言をしていました。しかし、審判では、子どものこれまでの言動等から、本当は母親を求めている部分がある可能性は否定できないとした上で、この子どもの矛盾した感情について、父母のいさかいを間近で見聞きしたきた子どもは、自分が母親と関わりを持つことで、いさかいが再燃することをおそれ、母親を遠ざけようとする意識が働いているものとも解されるとしました。

そして、いずれにしても、現時点で子どもの生活環境を大きく変更することは、子ども自身が欲しないものであるとして、子どもの親権者を母親に変更することは子どもの福祉に適うものとは認められないとしたのです。

このように、この審判では、単に子どもが母親を拒絶する言葉を発しているということだけではなく、どうして子どもがそのような言葉を発するのか、という理由を、子どものこれまでの言動や状況から検討した上で、現状の生活環境を変更したくない、という子どもの意思を尊重しています。

親権者の指定が、子どもの利益のためにされるものである以上、何が子どもの真意なのかを様々な事情から検討し、判断することは、不可欠なことと言えると思います。