田中史子の
つぶやきコラム
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2018.1.12
親権者指定の合意
夫婦が協議で、子どもの親権者を夫または妻にすることを合意し、離婚した場合でも、いったん親権者を定めた以上は、その後、父親と母親二人の合意のみで親権者を変更することはできません
仮に父親と母親の間で、親権者の変更をする合意ができていても、子の利益及び福祉の観点から、その変更が適切かどうかを考える必要があるため、家庭裁判所に調停又は審判の申し立てをする必要があります。
では、夫婦が離婚には同意しているが、親権者の指定について合意がないまま離婚届が作成され、提出された場合、親権者の指定について合意がなかったということは、どのようにして争えるでしょうか。
例えば、夫(もしくは妻)が離婚届に自分の署名・捺印をし、親権者の定めを記載しないまま妻(もしくは夫)に渡したが、後日、親権者をどちらにするか合意ができた後に、離婚届を提出するものと考えていたところ、妻(もしくは夫)が親権者の欄に自分の名前を記載して、すぐに提出したというような場合です。
この点、東京高等裁判所平成15年6月26日判決において、「協議離婚をした元夫婦の一方は、他方を被告として親権者指定協議無効確認の訴えを提起することも許される」としました。
ただ、夫が親権者の指定が無効であるとして争った上記事案においては、夫が子どもの親権者になることを強く述べていたのであれば、親権者を父と定める記載をしないまま離婚届出用紙に署名押印し、捨て印まで押して妻に渡していることは極めて不自然であり、そのような行為をしている以上、親権者となることに固執していないと見られても仕方がない、としました。
また、上記事案においては、夫婦の離婚後も、子どもは引き続き夫の家で暮らすことが前提とされていたこと等の事情から、夫が、子どもの親権者を妻と定める離婚届が提出されることは了解していたと推認するのが相当、とされ、親権者の指定の無効の訴えは認められませんでした。
親権者の指定の記載をしないまま、離婚届に署名・押印して相手方に渡す、ということは、通常、相手方を親権者とすることに了解したものと受け取られるということです。当然ですが、親権者をどちらにするのか争いがある場合には、自分の署名・押印のみをした離婚届を渡すことのないように、気を付けなければなりませんね。