田中史子の
つぶやきコラム
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2017.12.29
親権と監護権の分属
離婚に際して、未成年の子がいる場合には、必ず親権者を指定しなければなりません(民法819条)。
親権とは、親が未成年の子を、監護教育する権利及び義務であり、その内容は、①子の身上を保護・監督し、子を教育して精神的発達を図る監護養育の権利義務(身上監護権)と、②子が財産を有するときに、これを管理し、また子の財産上の法律行為について子を代理する等して、子の財産を維持管理する権利義務(財産管理権)に分けられます。
しかし、離婚の際に、夫婦の間に親権についての争いがある場合、親権と監護権を分け、父親と母親に分属させることがあります。例えば、親権者は父親とするが、子どもの日常的な監護養育は母親が行うこととして、母親を監護者と取り決めるというような場合です。このような取り決めは、離婚調停において、どちらも親権を譲らないが、早期に解決したいと言う場合に、妥協的に行われることが多いものと思います。
この点、子ども達の監護者をいずれも母親とした上で、長女、長男の親権者を父親、二女の親権者を母親とした審判があります(横浜家庭裁判所平成5年3月31日審判)。
つまり、長女、長男については親権と監護権を父親と母親に分属させることとしたのですね。この審判では、「父母の離婚によって単独親権者となることはやむを得ないことであるが、未成年者らの健全な人格形成のために父母が協力することが可能である場合には、協力関係が形成されることが望ましいことはいうまでもなく、幸いに本件においては、申立人と相手方とは、未成年者らの養育全般について、その福祉に添うように配慮し努力することができる能力を有するものと認められる。」とされています。
ところが、この審判で認められた親権と監護権の分属は、高等裁判所で取り消されてしまいました(東京高等裁判所平成5年9月6日決定)。母親が監護者として適当である以上、親権のみを切り離して父親に帰属させるのは適当ではないとされたのです。この決定では、「両親が離婚したとしても、未成年者の健全な人格形成のために父母の協力が十分可能であれば、監護権と親権とを父母に分属させることもそれはそれとして適切な解決方法である場合もあるとしても、」としたうえで、本件においては、父母双方の適切な協力が期待され得る状況にはないとされたのです。
子どものためには、離婚後も、父母が協力して子育てをしていくことが理想ですが、離婚に至った経緯からは、なかなかそれが難しいことが多く、悩ましいところです。