田中史子のつぶやきコラム

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2024.8.6

再度の財産分与の申し立ての可否


財産分与の取り決めをせずに離婚した場合でも、離婚後2年以内であれば、家庭裁判所に財産分与の申し立てをすることができます(民法768条2項、771条)。





では、いったん離婚の裁判で財産分与を定める判決が確定した後、新たに財産分与の対象となる財産がみつかった場合、離婚判決後2年以内であれば、再度財産分与の申し立てをすることができるのでしょうか。





この点、離婚の判決後、元夫から元妻に対し、元妻の有する有限会社の出資口数等について、財産分与を求めた審判(東京高等裁判所、令和4年3月11日決定)においては、離婚裁判の財産分与において考慮されていない財産があることを理由に、その財産について、重ねて財産分与を求めることはできないとしています。





その理由としては、「離婚における財産分与の制度は、夫婦が婚姻中に有していた実質上共同の財産を清算分配し、かつ、離婚後における一方の当事者の生計の維持を図ることを目的とするもの」、「財産分与請求権は、当事者双方がその協力によって得た一切の財産の清算を含む1個の抽象的請求権として発生するものであるから」「当事者は、上記判決等において考慮されていない財産があることを理由に、当該財産について、重ねて清算的財産分与を求めることはできない」とされています。





難しい言い回しですが、要するに、裁判所は、種々の事情を総合的に考慮した上で、財産分与の内容、方法を決めているのだから、いったん財産分与についての判決が出れば、財産分与の対象とならなかった財産があっても、それを理由に裁判のやり直しはできない、という事だと思います。





もっとも、財産分与の審判や判決後に、審理中に現れなかった新たな財産が判明したり、その後の事情の変更により、前の財産分与の内容を維持することが著しく信義、衡平に反する場合には、これを取り消し、変更することができる、とした決定もあります(広島高等裁判所松江支部、平成2年3月26日判決)。





この決定によれば、いかなる場合も再度の申し立ては認められないということではなく、著しく信義、衡平に反する結果となるような場合は、例外的に再度の財産分与の申し立ても認められる可能性があるということになります。










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