田中史子のつぶやきコラム

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2022.7.19

夫婦の同居義務について

夫婦には、同居義務その他の協力義務があります(民法752条)。
では、離婚を求めて別居している夫(もしくは妻)に対し、離婚を拒否している妻(もしくは夫)が、家庭裁判所に対して同居を命ずる審判を求めることができるのでしょうか。

この点、夫が不貞行為を繰り返し、一方的に別居を開始したという事例で、「基本的には、婚姻の維持継続の見込みが否定されず、同居を命ずることが公平の観念や個人の尊厳を害しないとみられる場合には、家事審判により具体的な同居義務を定めることができる」として、夫に対し、妻との同居義務を定めた審判もあります(大阪高等裁判所平成17年1月14日決定)。

一方、夫が妻に対して同居を求める審判を申し立て、原審判では同居を命じる審判が出されたものの、抗告審で否定された事例があります(福岡高等裁判所平成29年7月14日決定)。
この事例においては、上記の同居を求める審判の前に、妻が夫に対し離婚訴訟を提起したが、いまだ婚姻を継続し難い重大な事由があるとまでは認められないとして、離婚の請求は棄却されているという経緯がありました。

上記抗告審においては、「同居義務は、夫婦という共同生活を維持するためのものであることからすると、共同生活を営む夫婦間の愛情と信頼関係が失われる等した結果、仮に、同居の審判がされて、同居生活が再開されたとしても、夫婦が互いの人格を傷つけ、又は個人の尊厳を損なうような結果を将来する可能性が高いと認められる場合には、同居を命じるのは相当ではないといえる。そして、かかる観点を踏まえれば、夫婦関係の破綻の程度が、離婚原因の程度に至らなくても、同居義務の具体的形成をすることが不相当な場合はあり得ると解される。」としました。
その上で、本件の具体的な事情からは、同居した場合、相互に個人の尊厳を損なうような状態に至る可能性は高いとして、同居義務の具体的内容を形成するのは不相当と認められる状況にあるとしています。

なお、仮に審判で同居義務が定められたとしても、同居を強制することはできません。
そのことからは、同居義務を定める審判に実効性があるのは、決定の内容を読んで、当事者自身が夫婦関係を再度考え直す余地があるような事例に限られると思います。









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