田中史子のつぶやきコラム

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2022.5.20

婚姻中の預貯金が財産分与の対象とならない場合

婚姻中に、夫婦双方の協力によって取得した財産は、その名義が夫、妻のいずれであっても、離婚時には実質的共有財産として財産分与の対象となります。
例えば、夫(もしくは妻)が会社員として働いた給料で貯めた預貯金も、妻(もしくは夫)の家事等の協力があったと考えられ、財産分与の対象となるのが原則です。

ところが、東京家庭裁判所平成6年5月31日審判では、婚姻中の預貯金が財産分与の対象とされませんでした。
上記審判は、結婚前から、夫婦それぞれが作家、画家として活動しており、婚姻後もそれぞれが各自の収入、預貯金を管理し、それぞれが必要な時に夫婦の生活費用を支出するという形態をとっていたという事例です。
そのため、「一方が収入を管理するという形態、あるいは夫婦共通の財布というものがないので、婚姻中から、それぞれの名義の預貯金、著作物の著作権についてはそれぞれの名義人に帰属する旨の合意があったと解するのが相当」と認定され、個人名義の預貯金や著作権は財産分与の対象からはずしています。

ただ、夫婦の双方がそれぞれ働いて収入を得ており、それぞれが各自の収入を管理していても、通常は、婚姻中の預貯金は実質的共有財産と考えられます。
上記審判は、「それぞれの名義人に帰属する旨の合意」があったと認定された例外的な事例についてのものと思われます。

なお、上記審判においても、不動産のうち特有財産を除く部分については財産分与を行っています。
財産分与の割合は、2分の1とする(5:5)のが原則ですが、この点でも例外的に、芸術活動とともに家事労働を行ってきた妻の寄与割合を6、夫を4としています。






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