田中史子のつぶやきコラム

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つぶやきコラム

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2021.7.28

交通事故保険金と財産分与

婚姻中、夫婦の片方が交通事故によって取得した保険金は、財産分与の対象になるのでしょうか。
夫婦それぞれが結婚前に取得した財産や、結婚後、相続や贈与により取得した財産のような「特有財産」は、財産分与の対象とはならないのが原則です。
そこで、夫婦のいずれかが交通事故によって負傷し、保険金を取得した場合、それが「特有財産」にあたり、財産分与の対象とならないのかどうかが、問題となります。

この点、交通事故によって取得した保険金について、一部財産分与を認めた事例があります(大阪高等裁判所平成17年6月9日、財産分与審判に対する即時抗告決定)。
この事例では、結婚中に夫が交通事故にあって重い後遺症が残っており、離婚時、夫婦の財産は、交通事故の保険金以外ありませんでした。
離婚後、妻が保険金の財産分与を主張しましたが、夫は、保険金は今後の後遺症の治療の費用に必要等として、財産分与を拒否していました。

上記決定では、保険金のうち、傷害慰謝料、後遺障害慰謝料に対応する部分は、事故により受傷し、入通院治療を受け、後遺障害が残存したことにより夫が受けた精神的損害を慰謝するためのものであり、妻が保険金の取得に寄与したものではない、という理由で、夫の特有財産としました。
これに対し、離婚までの逸失利益(後遺症がなかったとしたら得られたはずの夫の収入)に対応する部分は、妻の寄与を認めて、財産分与の対象としました。
つまり、交通事故で取得した保険金が財産分与の対象になるのかどうかは、実質的に妻の寄与が認められる部分かどうかを基準に判断されていると言えます。

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