田中史子のつぶやきコラム

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2021.3.2

大学進学と養育費について

離婚後、子どもが大学に入学した場合、通常の養育費とは別に、私立大学進学にかかる費用を、元夫(もしくは元妻)に請求することができるのでしょうか。
また、養育費支払時期を、子どもの大学卒業まで延長することができるのでしょうか。

この点、子どもが高校生のときに、審判で子どもが20歳までの養育費が定められていたが、その後、子どもが私立大学に入学したとして、子どもの親権者である元妻が養育費増額を申し立てた事案において、東京高等裁判所(平成29年11月9日決定)は、以下のように述べています。
まず、上記決定では、「前件審判時には、高校生であった本人が大学生になり、現に通学し、成年に達した後も、学納金及び生活費等を要する状態にあるという事情の変更があった」としています。
その上で、「もっとも、大学進学のための費用のうち通常の養育費に含まれている教育費を超えて必要となる費用は、養育費の支払義務者が当然に負担しなければならないものではなく、大学進学了解の有無、支払義務者の地位、学歴、収入等を考慮して負担義務の存否を判断すべきである。」としています。
本件事案においては、元夫が、子どもの私立大学進学に了解していなかったと認められることや、子ども本人が奨学金等による援助を受けたり、アルバイトによる収入で補填したりすることが可能と考えられる等の事情から、通常の養育費に加えて、子どもが通学する私立大学への学納金について、元夫に支払義務を負わせるのは相当ではないとしました。

その一方で、上記決定は、元夫が子どもの私立大学への進学は認めていなくても、およそ大学進学に反対していたとは認められないことや、元夫が大学卒の学歴であること等から、「本人が大学に通学するのに通常必要とする期間、通常の養育費を負担する義務がある」として、子どもが満22歳に達した後の最初の3月まで、養育費の支払期間を延長しました。

上記のように、子どもの大学進学費用については、当然に請求が認められるものではなく、個別の事情によることになります。
また、大学進学費用の請求が認められない場合であっても、事情によっては、子どもの大学卒業時まで養育費支払期間が延長されることもあるということになります。




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