田中史子のつぶやきコラム

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2021.2.4

財産分与と詐害行為取消権

多額の債務を有する夫(もしくは妻)と離婚し、財産分与を受けた場合、夫(もしくは妻)の債権者から、詐害行為取消権を行使し、財産分与を取り消されることがあるのでしょうか。

民法424条1項本文では、「債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。」とされており(詐害行為取消権)、離婚の際の財産分与に対しても、債権者は詐害行為取消権を行使できるのかが問題となります。

この点、最高裁昭和58年12月19日判決は、「分与者が既に債務超過の状態にあって当該財産分与によって一般債権者に対する共同担保を減少させる結果になるとしても、それが民法768条3項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情のない限り、詐害行為として、債権者による取消の対象となりえない」としています。

すなわち、財産分与の規定の趣旨に反して、不相当に多額の財産分与を、債権者からの財産隠しのために分与したというような場合でなければ、債権者は、詐害行為取消権を行使することはできないということです。
財産分与が相当かどうかは、清算的財産分与、扶養的財産分与、慰謝料的財産分与の要素を考慮して検討することになりますが、清算的財産分与は、夫婦で協力して築いた財産を平等に分けるものですので、財産の2分の1の範囲であれば、「不相当に多額」と評価されることはないと考えられます。

もっとも、夫(もしくは妻)から妻(もしくは夫)に対する財産分与の裁判が確定していても、実際に財産分与を受ける前に、夫(もしくは妻)が破産した場合には、財産分与を受けることができなくなる(他の一般債権者と同列の破産債権となる)とされています(最高裁平成2年9月27日判決)。
財産分与の時期と破産のタイミングによっては、本来、受けることのできた財産分与を受けられない可能性がありますので、注意が必要です。

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