田中史子の
つぶやきコラム
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2019.2.25
相続と財産分与
夫婦の婚姻中、双方の協力によって取得した財産は、実質的共有財産として、離婚の際に財産分与の対象となります。
これに対し、夫婦のそれぞれが結婚前から有している財産や、あるいは、婚姻後に取得した財産であっても、相続や贈与等、他方の協力によらず取得した財産については、夫婦それぞれの特有財産となり、財産分与の対象とはならないのが原則です。
ただし、夫(もしくは妻)が相続で取得した財産であっても、妻(もしくは夫)が、その財産の維持に関して協力・寄与した場合には、例外的に、その寄与度に応じて精算の対象となることがあります。
では、夫婦間の遺産分割協議により、一方が不動産を単独で相続した場合はどうでしょうか?
この点、夫婦共通の養母の遺産について、夫と妻、共に2分の1ずつの相続権があったのに、夫婦間の遺産分割協議で妻に土地を取得させたという事例において、その土地を財産分与の対象にした審判があります(平成5年9月28日東京高等裁判所審判)。
この審判では、夫にも2分の1の相続権があったにもかかわらず、夫が妻に土地全部を相続させたのは、円満な夫婦関係を維持するためであるとし、実質的にみると、夫は、土地の2分の1の持分を妻に贈与することにより、妻の財産形成に寄与したものとみることができるとしました。
その理由として、例えば、夫が妻の両親と養子縁組していたところ、両親の相続にあたり、妻が円満な夫婦関係の維持を目的に夫にすべての遺産を相続した場合をあげ、その後の夫の不貞行為のため離婚することとなった場合においても、妻が両親の遺産について財産分与を求めることができなくなるのは、公平の観点から不当である上に、社会通念にもそぐわない、としています。
確かに、夫が妻の両親と、もしくは妻が夫の両親と養子縁組しているような場合、法定相続分が2分の1ずつであったが、円満な夫婦関係の維持のためにどちらか一方の単独相続としているとき、財産分与の際にそれを考慮しなければ、不公平な場合が生じます。財産分与においては、形式的に考えるだけではなく、実質的な「公平の観点」から考えていく必要が大きいと思います。