田中史子の
つぶやきコラム
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2018.5.11
性格の不一致による離婚
離婚原因として、「性格の不一致」ということがよく言われます。しかし、夫婦それぞれの性格が異なることは当然のことであり、性格が一致している、という夫婦の方がめずらしいのではないでしょうか。
裁判で、性格の不一致を離婚に離婚が認められるのは、「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)にあたる場合であり、単に性格が不一致であるというだけでなく、夫婦関係が完全に破綻していて修復が出来ない状態であることが必要です。
この点、東京高等裁判所昭和54年6月21日判決においては、長年にわたり別居している夫婦で、夫から離婚調停を2回にわたり申し立てても、妻は離婚に応じず、裁判でも妻は夫と離婚することを拒んでいた事例で、夫婦関係の破綻の原因を性格の不一致とし、離婚を認めています。
この事例では、夫は、高い水準の知的生活を希望し、平凡な家庭生活には魅力を感じていなかったのに対し、妻は、平凡、平和的な家庭生活を求めており、結婚当初より、性格の不一致が明らかな状況で、長年別居が続いていたというものです。判決は、夫は「心優しく、人情深い面をもつと同時に、気位高く、神経質で気難しく、好き嫌いの激しい人物」であり、妻は夫との共同生活において相当の緊張を余儀なくされ、また心労を重ねたであろうことは容易に想像されるとしながら、「破綻した夫婦の一方が持つある種の人格的傾向、性格が破綻原因になったとしても、そのような性格などの保有それ自体を指して有責行為ということはできない」としています。そして、夫婦関係の破綻原因の最大のものとして、夫婦の生活観、人生観上の隔絶(いわゆる性格の不一致)であったとしかいうよりほかはなく、両者の生活観、人生観はそれぞれの本人にとっては価値あるものであるから、隔絶の存在をもって、夫、妻の双方ともを非難することはできない、としています。
この事例についてみると、これだけ性格の不一致が明らかなのに、どうして結婚したのか、ということが一番の疑問です。
ただ、自分と性格が正反対の人が魅力的に見える、ということもあると思います。結婚した以上、お互いに相手の性格を尊重し、相手の人生観を認め合わなければ、夫婦生活は成り立って行かないのだと考えさせられる判決でした。