田中史子の
つぶやきコラム
田中史子が日々の弁護士業務に
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2018.5.1
熟年離婚
結婚して長年が経ち、子ども達も独立した後、夫が定年退職したとたん、妻から離婚を申し出られるということがあります。
夫とすれば、これまで妻や子ども達のために、毎日、必死で働いてきて、やっとこれから妻とゆっくり過ごせると思っていたのに、突然の離婚の申し出に驚き、どうしてなのかわからない、という状況になってしまします。しかし、妻の方は、これまで夫から長年、押さえつけられ、横暴な態度をとられてきて、我慢に我慢を重ねてきたものの、夫の定年をきっかけに、夫に束縛されることなく生活したいと考えて離婚を申し出ているというように、双方の認識が全く異なっているということはよくあります。
このような場合、夫が離婚に同意しなければ、調停や裁判となり、「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5項)があるかどうかが争われることになります。
この点、結婚して30年近く生活を共にし、子ども達もすでに成人して独立している、という夫婦間で、妻が夫と別居し、離婚を申し立てている離婚裁判において、「夫婦の婚姻関係はこれを継続することが困難な事情にある」としながらも、「一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当」とし、離婚を認めなかった裁判例があります(平成3年9月20日名古屋地方裁判所岡崎支部判決)。
上記判決においては、「現在原告と被告との婚姻関係はこれを継続することが困難な事情にあるが、なお被告は本件離婚に反対しており、原告に帰ってきてほしい旨懇願しているのであって、原告と被告は子供達がそれぞれ独立した現在老後を迎えるべく転換期に来ていると言えるところ、被告が前記反省すべき点を十分反省すれば、いまなお原告との婚姻生活の継続は可能と考えられるから、原告と被告、殊に被告に対して最後の機会を与え、二人して何処を探しても見つからなかった青い鳥を身近に探すべく、じっくり腰を据えて真剣に気長に話し合うよう、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認め、本件離婚の請求を棄却する次第である。」としています。
「二人して何処を探しても見つからなかった青い鳥」という表現が判決文にあるのには驚きました。これ以外にも、判決文とは思えない独創的な表現が多数あり(ゲマインシャフト、ゲゼルシャフト等。高校生の時に倫理社会で習った記憶がありますが、なぜ、離婚の判決文の中でこのような言葉が使われているのか、よくわかりません。)、このような判決文を受け取った当事者はどのように感じたのか、心配です。30年近く一緒に生活して、妻が、もうこれ以上我慢できない状況になって離婚を求めている状態で、夫婦関係を修復するのは、実際上は極めて難しいのではないでしょうか。