田中史子の
つぶやきコラム
田中史子が日々の弁護士業務に
おいて感じていること、
考えていることについて
お伝えさせていただきます。
※当事務所は、当ウェブサイトの内容の正確性・妥当性等につきましては細心の注意を払っておりますが、その保証をするものではありません。 また、当ウェブサイトの各情報は、掲載時点においての情報であり、その最新性を保証するものではありません。
※当事務所は、当ウェブサイトの内容の正確性・妥当性等につきましては細心の注意を払っておりますが、その保証をするものではありません。 また、当ウェブサイトの各情報は、掲載時点においての情報であり、その最新性を保証するものではありません。
TOP > 田中史子のつぶやきコラム > 財産分与と株価の評価
2018.4.9
財産分与と株価の評価
財産分与の対象には、株式も含まれます。しかし、上場株式の株式で、株価が明確になる場合であっても、時間の経過によって株価は変動していくため、財産分与にあたって、どの時点の株価を基準とすべきかが問題となります。
この点、どの範囲の株式が財産分与の対象になるかは、原則として別居時点が基準となりますが、株価の評価の時点については、一般的には裁判の最後の日とされています。
しかし、株価が大きく変動している場合に、ある特定の日の株価を基準として判断すると、財産の公平な分配という財産分与の趣旨に反することがあります。
そこで、株価が約5年間で3500万円下落している事例において、資産としての確実性を有しないことを考慮し、夫と妻の主張する株価の判断時点の平均値を株式の評価額としたものがあります(平成16年6月18日広島高裁岡山支部判決)。
一方、非上場会社の株式については、相場がないため、財産分与においてその価格をどのように評価するのかが問題となります。
財産分与における実務では、非上場株式の評価方法について確立した基準はなく、相続税の申告の際の評価基準を用いることがあります。当事者双方が、相続税の申告の際の基準による評価に同意すれば、その評価により計算した額を財産分与することに問題はありません。
しかし、当事者がそれに納得せず、株価の鑑定報告書を証拠として提出することもあります。ただ、非上場会社の株価の鑑定は、非常に難しく、相手方が鑑定報告書の内容について争い、裁判所が評価額について立証がなされていないと判断されることもあります。そうなれば、株については他の財産から切り離し、財産分与の割合に応じて、株そのものを相手方に分与することになってしまいます。
そのため、会社経営者の場合、自社株についての評価が争いとなり、判決となった場合、自社株そのものを財産分与することになる経営上のリスクも考慮しておく必要があります。
また、株式そのものを財産分与することになった場合、多額の譲渡所得税がかかることもありますので、注意が必要です。