田中史子のつぶやきコラム

田中史子の
つぶやきコラム

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※当事務所は、当ウェブサイトの内容の正確性・妥当性等につきましては細心の注意を払っておりますが、その保証をするものではありません。 また、当ウェブサイトの各情報は、掲載時点においての情報であり、その最新性を保証するものではありません。

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2018.2.25

浪費

夫(もしくは妻)が、一方的に別居して、それまで渡していた生活費を渡さない、という場合であれば、民法770条1項2号の離婚原因である「悪意の遺棄」にあたる場合があります。しかし、夫婦が同居している場合には、夫(もしくは妻)が浪費し、生活費を入れない状況であっても、「悪意の遺棄」にあたるとすることは難しいと思います。

では、夫(もしくは妻)の浪費は、離婚原因になるのでしょうか。

この点、東京家庭裁判所昭和42年7月28日の審判においては、夫が、長女が生まれた頃から競輪・競馬等の賭け事に没頭し、労働意欲に乏しく、更に、家計をかえりみず深酒を重ね、浪費癖に富み、妻に対してほとんど生活費を渡さないのみか、長女の養育についてもすごぶる無責任な生活態度に明け暮れた等と認定し、「当事者間の結婚生活が完全な破綻状態に陥っていることは他言するまでもない」として離婚を認めています。

この審判は、夫の浪費等の無責任な生活態度が、「顕著な協力扶助義務の違反」と判断していますが、民法上の離婚原因としては、抽象的な離婚理由である、「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)にあたるということになります。

また、東京家庭裁判所昭和41年4月26日の審判においては、生命保険の外務員として勤務していた妻が、勤務成績をあげるために、架空人名義で保険契約証書を作成し、夫から月々受領する給料を操作して、保険料の支払いにあてたり、毎月競馬に浪費したり、夫から受領する給料で不必要な衣類、時計、貴金属類を月賦で購入し、月賦代金の支払いが終わらないうちに、これらの物品を入質して、借り入れた現金を浪費した等の事例において、妻の行為は、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するとしました。

さらに、夫の収入が必ずしも高給ではないのに、家計を預かっている妻が高額な支出を続けて家計費の不足をきたし、夫に秘して入質、借財を繰り返したという事案において、「夫にとり婚姻を維持し難い重大な事由」であるとした裁判例もあります(東京地方裁判所昭和39年10月7日判決)。

上記にあげた審判や裁判例は、度重なる浪費により夫婦生活が維持できない状況であることが明らかな事例です。浪費にあたる事実が一度あったからといって、それだけで直ちに離婚が認められるということではありません。しかし、家庭生活を行っていく上で、経済的基盤の確保は重大な問題であり、何度注意しても浪費を重ね、それにより家計が成り立たない状態になっている場合には、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するといえます。

結婚前に相手に浪費癖のあることがわかっていれば、結婚という選択はしない人が多いと思いますが、それが結婚前にはわからないこともあります。夫婦で話し合いを重ねても、相手の浪費癖が改善されない場合には、早期に離婚の決断をすることが必要な場合もあると思います。