田中史子のつぶやきコラム

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2018.2.18

有責配偶者からの離婚請求

自ら不貞行為等を行って、夫婦関係を破綻させた夫または妻を、有責配偶者といいます。この有責配偶者からの離婚請求については、裁判所は、これを認めてきませんでした。しかし、昭和62年9月2日最高裁の大法廷で言い渡された判例では、有責配偶者からなされた離婚請求であっても、一定の要件を備えていれば離婚を認める方針を打ち出しました。

その要件は、①夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及んでいること、②その夫婦間に未成熟の子が存在しないこと、③相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態に置かれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情の認められないこと、というものです。

上記の判例は、「思うに、婚姻の本質は、両性が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営むことにあるから、夫婦の一方又は双方が既に右の意思を確定的に喪失するとともに、夫婦としての共同生活の実体を欠くようになり、その回復の見込みが全くない状態に至った場合には、当該婚姻は、もはや社会生活上の実質的基礎を失っているものというべきであり、かかる状態においてなお戸籍上だけの婚姻を存続させることは、かえって不自然であるということができよう。」とし、有責配偶者からの離婚請求であるからといって、一律に離婚を認めないということについては否定しています。

しかし、「離婚請求は、正義・公平の観念、社会的倫理観に反するものであってはならないことは当然であって、この意味で離婚請求は、身分法をも包含する民法全体の指導理念たる信義誠実の原告に照らしても容認され得るものであることを要する」として、上記の3要件のもとでは、有責配偶者からの離婚請求であるというだけで、離婚請求が許されないとすることはできないとしています。


上記の3要件のうち、別居期間が相当の長期間に及んだかどうかについては、上記最高裁判決は、「両当事者の年齢及び同居期間との対比」によって判断するとしています。よって、夫婦がまだ若く、同居期間が短ければ、別居期間が比較的短くても「相当の長期」と評価される場合もあると考えられます。


また、平成2年11月8日の最高裁判決においては、「別居期間が相当の長期に及んだかどうかを判断するに当たっては、別居期間と両当事者の年齢及び同居期間とを数量的に対比するのみでは足り」ないとし、「別居後の時の経過とともに、当事者双方についての諸事情が変容し、これらのもつ社会的意味ないし社会的評価も変化」していることを考慮に入れるべきとしています。


上記の平成2年の最高裁判決の原審においては、約8年の別居では相当の長期間と言うことはできないとされていました。しかし、上記最高裁判決は、有責配偶者である夫が、別居後においても妻子の生活費の負担をし、別居後まもなく不貞の相手方との関係を解消し、更に離婚を請求するについては、妻に対して財産関係の清算についての具体的で相応の誠意があると認められる提案をしていること、一方、妻の方は、別居後に夫の不動産に処分禁止の仮処分を執行するに至っていること等を認定し、原審の判断を覆しました。

別居後8年近く経過していて、上記のような事情があるのであれば、いくら有責配偶者からの離婚請求であっても、離婚自体は認め、妻に対する相当な財産的給付を確保することが重要だと言えるのではないでしょうか。