田中史子のつぶやきコラム

田中史子の
つぶやきコラム

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※当事務所は、当ウェブサイトの内容の正確性・妥当性等につきましては細心の注意を払っておりますが、その保証をするものではありません。 また、当ウェブサイトの各情報は、掲載時点においての情報であり、その最新性を保証するものではありません。

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2018.2.15

仮装離婚

夫婦の間で、本当は離婚する意思はないにもかかわらず、離婚届を提出することがあります。

夫(もしくは妻)に借金があり、妻(もしくは夫)への財産分与によって債権者からの財産の差し押さえを免れるために離婚届を提出する場合、また、妻(もしくは夫)が結婚により夫(もしくは妻)の苗字に変えたものの、結婚前の苗字に戻したいという理由で、離婚届を提出する場合等が考えられます。

このような仮装の離婚は、有効に成立するのでしょうか。

この点、昭和38年1月28日の最高裁判決においては、妻を戸主とする婚姻をした夫婦が、事実上の婚姻関係は維持しつつ、単に、夫に戸主の地位を与えるための方便として、協議離婚の届出をした場合でも、両名が真に法律上の婚姻関係を解消する意思の合致に基づいてこれをしたものであるときは、協議離婚は無効とはいえないとされています。

すなわち、夫婦が、事実上、夫婦共同生活を続けていく意思であっても、離婚届を提出するということについて合意している場合には、離婚は有効に成立し、撤回できないということになります。

それでは、債権者からの財産の差し押さえを免れるために離婚し、妻(もしくは夫)に財産分与として財産を渡した場合、どうなるでしょうか。

この点、単に夫(もしくは妻)に多額の借金があるというだけで、離婚の際に財産分与をしてはいけない、ということにはなりません。財産分与は、結婚生活中に有していた夫婦の共同財産の精算をするものですから、原則として、債権者を害する行為にはならず、詐害行為取消権(一定の要件のもとで、債権者が債務者の行為を取り消すことができる権利)の対象ではありません。

しかし、「特段の事情」がある場合、財産分与も詐害行為取消権の対象になります。

最高裁判所は、平成12年3月9日の判決において、離婚に伴う財産分与として金銭の給付をする旨の合意は、その額が不相当に過大であり、財産分与を装ってなされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情があるときは、不相当に過大な部分について、その限度において詐害行為として取り消されるべきとしました。

上記判例の考え方によれば、仮装離婚による財産分与も、過大であると判断された部分だけが詐害行為として取消しの対象になると考えられます。