田中史子のつぶやきコラム

田中史子の
つぶやきコラム

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2018.1.5

平成29年12月5日最高裁第三小法廷決定

昨年12月5日の、子どもの親権・監護権に関する最高裁判所第三小法廷の決定を読み、その内容に感動したので、今日は、そのことについて書きたいと思います。

この事案は、協議離婚の際、父親を長男の親権者と定めたが、離婚前から母親が長男を連れて別居しており、離婚後も母親が長男の監護を継続しているという状況でした。その状況において、母親が家庭裁判所に親権者の変更の調停を申し立てたところ、父親が母親に対し、親権にもとづいて、長男の引渡しを求める仮処分命令の申立てをしたというものです。

父親からの仮処分命令申立は、家事事件の手続きによるものではなく、一般の民事訴訟の手続きによるものでした。福岡高等裁判所那覇支部は、本件の申立は、民事訴訟の手続きによることはできないとして、却下しました。

これに対し、最高裁は、「離婚した父母のうち子の親権者と定められた一方は、民事訴訟の手続きにより、法律上監護権を有しない他方に対して親権に基づく妨害排除請求として子の引き渡しを求めることができる」としました。

しかし、「親権を行う者は子の利益のために子の監護を行う権利を有する(民法820条)から、子の利益を害する親権の行使は、権利の濫用として許されない。」とし、父親が家事事件の手続きではなく、民事訴訟の手続きによる子の引き渡しを求めたことは権利の濫用であるとして、申立を却下しました。

すなわち、最高裁は、法律上は、親権者として子の引き渡しを求める権利があるが、その親権の行使が子の利益を害する場合には、「権利の濫用」であり許されないとしたのです。

さらに、木内道祥裁判官の補足意見では、「所有権が対象に対する排他的支配権であって、権利であるが故にその行使を妨害されないという妨害排除請求権が認められるのとは異なり、単に親権者であることからその親権の行使が認められるのではなく、その行使が子の利益のためにするものであってはじめて権利の行使として許容される。」と、述べられています。

本当に、そのとおりだと思います。親権は、あくまで子どもの利益のためのものであって、所有権と同じように考えてはいけないのです。

私が弁護士として、親権や監護権について争いになっている事案のご依頼を受け、調停や審判をする中で、どのようにすればよいのか迷ったときには、お子さんの利益のためには何が一番良いのか、という点に立ち戻って考えるようにしています。

本件の最高裁の決定を読んで、その考え方に間違いはなかったということを改めて認識させられました。