田中史子のつぶやきコラム

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つぶやきコラム

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2017.12.31

親権者の適格性における継続性の基準

家庭裁判所において、親権者の適格性を判断する上で、重視される事情の一つに「継続性の基準」があります。

子どもの健全な成長のためには、親子の精神的結びつき、情緒的交流を途切れさせないことが重要であり、現在の子どものが安定しており、子どもが生活環境にも適応しているときには、できるかぎり、現在の監護状況を維持し、子どもの環境を変えないことが重要だという考え方です。

子どもと親との間に築かれた精神的結びつき、情緒的交流を継続させるということは、子の利益を第一に考えたとき、特に重視すべき基準であると思います。

ただ、家庭裁判所が、継続性の基準により親権者の適格性を判断するということになると、実力による子の奪い合いの結果を認めることになりかねないという問題があります。すなわち、夫(もしくは妻)が、相手方のもとから子どもを連れ去った場合ても、その状態での監護が長期間継続し、子どもの生活が安定していれば、子どもを連れ去った夫(もしくは妻)が親権者と認められることとなってしまうことになれば、実力による子どもの奪い合いを生じさせてしまいます。

この点、母親が父親に対し、子どもの引き渡しを求め、子どもの引き渡しを認める審判(保全処分)がなされたにもかかわらず、父親が子どもの引き渡しを拒否し、約1年5か月の間、子どもを継続的に育てているという事案において、親権者を父親とすることを認めなかった決定があります(東京高等裁判所平成23年7月20日決定)。

この決定では、①父親による子どもの監護は、父親から母親への暴力により、母親が別居せざるをえなかったことから開始されたものであること、②子どもの誕生から約3年4か月間は、主として子どもを監護養育していたのは母親であるのに、母親の意思に反して父親が監護を開始したものであること、③子どもを母親に引き渡すことを命ずる審判がなされたにもかかわらず、父親が監護を継続し、現在に至っていること等の事情から、父親の監護により生じた状態を「既成事実として必要以上に重視することは相当ではない」とされています。

このように、家庭裁判所においては、子どもの監護開始や監護の継続について、違法性の程度が強い場合には、継続性の基準の適用は慎重にしていると言えます。

なお、監護の「継続性」については、出生時からの監護者との情緒的・心理的結びつきを重視する「監護者との継続性」と、これまでの生活環境との結びつきを重視する「監護環境の継続性」とに区別して考えられます。子どもが乳幼児であれば、「監護者との継続性」が重視されますが、小学校の中学年以上になれば、地域や友人とのつながりも強くなり、「監護環境の継続性」の要素が強くなっていくものと思われます。