田中史子のつぶやきコラム

田中史子の
つぶやきコラム

田中史子が日々の弁護士業務に
おいて感じていること、
考えていることについて
お伝えさせていただきます。

※当事務所は、当ウェブサイトの内容の正確性・妥当性等につきましては細心の注意を払っておりますが、その保証をするものではありません。 また、当ウェブサイトの各情報は、掲載時点においての情報であり、その最新性を保証するものではありません。

※当事務所は、当ウェブサイトの内容の正確性・妥当性等につきましては細心の注意を払っておりますが、その保証をするものではありません。 また、当ウェブサイトの各情報は、掲載時点においての情報であり、その最新性を保証するものではありません。

TOP > 田中史子のつぶやきコラム > 有責配偶者からの婚姻費用分担請求

2017.12.28

有責配偶者からの婚姻費用分担請求

夫婦には、婚姻費用(生活費、子の教育費、医療費等)を分担する義務があります(民法760条)。では、夫婦仲が悪くなり、別居状態になった場合はどうでしょうか。

この点、判例では、夫婦間の婚姻関係が事実破綻した状態で別居していても、法律上離婚していない限り、原則として婚姻費用を分担する義務があるとされています(大阪高裁昭和33年6月19日決定等)。

原則として、正式に離婚届を出すまでの間は、いくら婚姻関係が破綻していても、婚姻費用の支払義務はあるということです。

では、有責配偶者(婚姻関係を破綻させたことについて、もっぱら責任がある夫もしくは妻)からの婚姻費用分担請求も認められるのでしょうか。

この点、妻の不貞行為により、婚姻関係が破綻したと認定された事案で、妻が婚姻費用の分担を求めることは信義則に照らして許されない、とした決定があります(福岡高等裁判所宮崎支部平成17年3月15日)。この事案では、妻から離婚訴訟を提起しており、妻自身が、「夫婦間の具体的同居協力扶助の義務が喪失したことを自認」しているとされたのです。

上記事案は、妻の不貞行為について、弁護士作成の「合意書」等の明確な証拠があったため、高等裁判所は、妻の不貞行為により婚姻関係が破綻したものと認定し、妻からの婚姻費用の分担請求を認めませんでした。

ただ、そのような明確な証拠がない場合に、不貞行為があったのかどうか、ということを婚姻費用の審判で認定しようとするのは困難であり、婚姻費用についての紛争が長期化するおそれがあるとも言えます。

これに対し、岡山家庭裁判所玉島出張所平成4年9月21日審判においては、夫が重病であるにもかかわらず、妻が同居を拒否し、7年間別居のままであるという事案において、「既に夫婦間は回復しがたいまでに破綻している」としました。その上で、子の生活費にかかわる部分のみを婚姻費用として認め、妻の生活費にかかわる部分の支払い義務は認めませんでした。

この審判は、「夫婦のどちらが悪いか。」ということよりも、夫婦関係の破綻の程度に着目し、妥当な結論を導いていると言えます。