田中史子のつぶやきコラム

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つぶやきコラム

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2017.12.26

財産分与請求の行使期間

離婚の際、夫婦の財産は何もないと思って財産分与を求めなかったが、その後、夫婦の財産があったことがわかった場合、財産分与の請求はできるのでしょうか。

この点、家庭裁判所に対する財産分与の請求は、離婚の時から2年以内に行使しなければならないと規定されています(民法768条但書)。これは、離婚後の財産関係をできるだけ速やかに確定するためであり、離婚後2年を過ぎれば、財産分与請求権は行使できないのが原則です。

では、夫(もしくは妻)が、離婚時に夫婦共有の財産を隠していた場合であっても、2年を過ぎてしまえば、財産分与の請求ができなくなってしまうのでしょうか。

この点、財産分与の対象とすべき国債があることを、妻が隠したままで財産分与を行った事例において、妻が財産を隠していた行為を、夫に対する共有持分権侵害の不法行為であると認めた判決があります(浦和地方裁判所川越支部平成元年9月13日判決)。

財産分与としては、2年を過ぎてしまっているので認められないものの、損害賠償請求権と言う形で、実質的に財産分与を受けたと同様の結果を導いていると言えます。

これに対し、離婚後2年が経過した後、妻が夫に対し、共有財産を隠していたことを理由に、損害賠償請求等を求めた事案において、妻の請求が認められなかった判例があります(東京地方裁判所平成25年8月8日判決)。この判決においては、夫と妻は、それぞれの財産をそれぞれが管理保管していたことや、妻は夫に対し、離婚の際に財産分与を求めていなかったことから、夫が妻からの財産の開示請求に対して意図的に預金の存在を隠していたなど、不法な方法によってその存在を隠していたと認めることはできないとしました。

この判決のように、そもそも離婚時に財産分与の請求がされていなかった場合、わざわざ自分から自主的に「このような財産を持っています。」と申告しなくても、違法な財産隠匿にはならないということです。財産分与を請求するかどうかは、それぞれの自由です。財産分与について協議をするとなると、時間がかかるので、財産分与の請求はせず、早く離婚したい、という人もいます。

ただ、相手方から財産分与の請求をされているのに、財産を隠したままで離婚すれば、後日、それが相手方にわかった時に、損害賠償請求をされる可能性が出てきます。財産分与の請求がなされている以上、夫婦共有財産については、お互いにすべて明らかにした上で離婚するのが、かえって早期解決につながるということですね。

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