田中史子のつぶやきコラム

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2017.12.23

将来の退職金と財産分与

夫(もしくは妻)が将来支給を受ける予定の退職金は、財産分与の対象になるのでしょうか。

この点、①そもそも退職金を財産分与の対象とすべきか、という問題と②財産分与の対象にした場合、分与する金額の算定方法及び、分与する時期をいつにするのか(離婚時なのか、退職金受領時なのか)、という問題に分けて考える必要があります。

まず、①財産分与の対象とすべきかどうかという点については、退職金は賃金の後払いという性格も有することから、退職金も夫婦が互いに協力して形成した財産であると考えられ、近い将来に受け取ることがほぼ確実と言える場合には、財産分与の対象になると考えられます。定年までの期間が10年以内であるなど短く、公務員や退職金規定がある会社等であれば、近い将来に退職金を受け取ることがほぼ確実と言えると思います。

ただ、公務員等で、倒産のリスクのない場合には、定年退職まで10年以上あっても、退職金を財産分与の対象と認めることに支障はないと思われます。この点、13年後に支給される予定の退職金を、財産分与の対象とした裁判例もあります(東京地方裁判所平成13年4月10日判決)。

この判決は、「(退職金は)将来の受給という不確定要素があることは否めないため、具体的には、将来、退職金を受給できる蓋然性が高い場合に限り、」財産分与の対象となる、としたうえで、夫は地方公務員であり、「民間企業と異なり、倒産等により退職金が受給できない可能性は皆無といってよく、何らかの事情で早期に退職することがあったとしても、その時までの勤務年数に対応した退職金を受給できることはほぼ間違いないと言える」として、将来の退職金を財産分与の対象として精算しています。

次に、②退職金を財産分与の対象とするとしても、その額の算定方法及び分与時期が問題になります。

退職金は、入社時から退職時までの期間に対して支払われるものですが、当然ながら、その全期間が財産分与の対象となるのではなく、婚姻関係に基づく同居期間に対応する部分が対象となります。例えば、勤続年数20年で退職金500万円、そのうち夫婦共同生活を送っていた期間が10年であれば、250万円の部分が財産分与の対象となると考えられます。ただし、退職金も、自己都合による退職の場合と定年や会社都合等による退職の場合とは金額が大きく違うことがあります。また、退職金は、退職後でなければもらえませんから、離婚時にすぐに財産分与しないといけないということになると、手持ちの資金がなければ、借り入れ可能な場合であっても、退職時までの金利を支払わないといけないということになってしまいます。

この点、判例の判断は、事例により様々であり、算定方法等が確立しているわけではありません。いろいろな判決を読んでいても、判断がそれぞれに違い、複雑です。この点、広島高等裁判所平成19年4月17日判決は、比較的わかりやすいです。夫が別居時に自己都合により退職したものと仮定して、分与額を算定し、その上で、支払時期は、将来、退職金が支給されたときとしたのです。

ただ、この判決では、仮に実際の退職手当の額が、退職時には低くなっていても、判決で決められた額を支払うべきとの判断となっています。離婚訴訟や財産分与の審判で、財産分与の額を確定しておかなければならない以上、このような判断となるのも仕方のないことかもしれません。ただ、想定外の事態により、夫(もしくは妻)の退職金がごくわずかしか出なかった場合にも、判決で決められた額を支払わなければならないとすれば、夫(もしくは妻)に非常に酷な事態が発生するのではないかと、心配してしまいます。将来の退職金の問題は、難しいですね。